この青空とエイトを守る事が私の使命である。


 世のディーゼル車、貨物登録車オーナーの間で必ず話題に上がるのが自動車排出ガス規制、NoX,PM法である。大気汚染防止法に基づき、新車だけでなく現在運行中の自動車まで、排出基準値に満たない車輌は一定の期間が過ぎると対象地域での継続運行が不可能になるというもので、対象となる車種はガソリン、ディーゼル問わず貨物登録車、貨物、乗用登録のディーゼル車。8ナンバー(特殊用途)車も、ディーゼル車、貨物車ベースは規制対象となる。我がジムニーエイトは、4ナンバー貨物登録のガソリン車。つまり、NoX、PM規制対象車である。
 PM規制対象地域は、首都圏、愛知・三重圏、大阪・兵庫圏。首都圏においては、ディーゼル車の通行規制まで行うという。私が住んでいる兵庫県では、NoXに関しては地域外、PM対象地域内である(これポイント)。平成15年に受けた車検時に車検証に追記されている。平成15年9月30日以降の有効期間満了日を超えて使用の本拠を置く事が出来ません。つまり、エイトを降りろということだ。
 幸い、我がエイトの有効期限満了は9月11日。つまり、19日差で一年間の延命を遂げた事になる。実に奇跡的だが、今年(平成16年)こそは絶命の危機。陸運支局に日参し、対策を練っていたのだが・・・・・・・



手段1・・・・・乗用登録する(4ナンバーから5ナンバーへ)結果・・撃沈!

 エイトはガソリン車であるから、用途が乗用であれば問題ない訳だ。一度目のNoX規制の際には、この用途変更で延命した個体が少なくなかった。また、ディーゼル車であっても、この用途変更により乗用化し、乗り入れ規制にのみ適合させ、指定地域の通行権利だけを得るという方向もある(この場合、使用の本拠がNoX対象地域外である必要がある)。しかしながら、今回の規制から、嫌な噂を耳にするようになった・・・・。
 「貨物から乗用への用途変更の基準が厳しくなる」特に驚いたのは、乗用登録車の設定がない貨物車、例えば、バン、ワゴンの設定がカタログ上にあるのであれば良いが、貨物車のみ、つまり生粋の貨物車は用途変更不可となるという点だ。居ても立ってもいられなくなり、陸運支局へと足を運んだ。そこで浴びせかけた質問は・・・

@「上記のような噂があるが、それは本当なのか」
A「本当だとしたらそれは法で定めるところなのか(保安基準が改正されたのか)」
B「貨物から乗用への用途変更は、現実として可能なのか」の3点。

これらに対する担当官の返答は・・・
「@については、当方では聞いていません。新たに用途変更に関する法律で定めらたという事も聞いていないですね。しかし、8manoさんがおっしゃられるように、用途変更について留意していただく点として、道路運送車輌の保安基準と自動車の用途等の区分があります。これに合致し、なおかつブレーキや車体の形状などの適合も必要となります。8manoさんが耳にされた情報の、『貨物のみの設定の車種が用途変更不可』というのは、恐らくこの保安基準を満たせない、もしくは適合できない車種について(つまり、生粋の貨物車)の事だと思われます、ですから、あながち嘘でもないと言えますね。」
なるほど。では、現実的にみて、私のエイトは用途変更により延命できるのかというBに対しては・・・
「実際には、8manoさんが所有されている自動車が、前述の基準に完全に適合できれば不可能ではないと思いますし、そのような方法で規制をクリアして継続運行されるという方法自体には問題ありません。ガソリン車なわけですし(笑)。頑張ってくださいね。その時は、8manoさんの自動車を持ち込んでください。」
なるほどなるほど。長時間、ご苦労様でした。上記の会話を見てもらえば解るように、陸運支局での対応は×××なお上の通達とは裏腹に、滅茶苦茶親切である。そう、敵は検査官ではない。あの法律なのだ。

さて、上記にもある、道路運送車輌の保安基準と用途の区分について調べてみた。

項目 乗用車 貨物車 エイトの場合
衝撃吸収ハンドル S48.10〜採用 摘要除外 未採用
舵取り装置の施錠装置 S48.12〜採用 適用除外 未採用
衝突、追突における燃料漏れ防止装置 S50.12〜採用 小型車に限りS62.9〜採用 未採用
インパネの衝撃吸収構造 S50.4〜採用 適用除外 未採用(というか鉄板)
座席及び座席取り付け装置の強度 S50.12〜採用 適用除外 大変不安
座席後面の衝撃吸収構造 S50.12〜採用 適用除外 未採用
座席ベルト S44.4〜採用 S44.4〜採用 ショボイ2点式
頭部後傾押止装置 S44.4〜採用 S44.4〜採用 大変不安

 この他にも、座席面積、足場空間、荷室面積などなど。
こんな具合である。これを見て解るように、昭和44年以前の登録車であれば、比較的少変更で用途変更可能である。古いJeepが3ナンバーを掲げて生き延びているのは、これによるところである。
 さて、では我がエイトはどうかというと・・・・外観、構造は古めかしいが、初年度登録は昭和56年。この年代といえば、大抵の快適装備を備え、安全面においても自動車として完成されてきた頃。上記の装備も当然の如く採用されているのだが・・・・・エイトの場合、年式の割りに構造が古すぎる故、乗用車の保安基準に全く適合できない!のである。やるにしても、クラッシュパッドの製作、シートの交換、ハンドルコラムの製作等等、内装を総てやり直さなくてはならない・・・。これはアウト!!である。別の方法を探る事にした。姫路500 のナンバーも気に入らないし。できれば姫路45 ナンバーを維持したい。なにより、私の力で内装を再構築するのは難しい。陸運支局側の担当官も、断念が妥当だと判断した(あくまで個人の手による乗用化に関してです)。



手段2・・・・・ガス検を通す 結果・・・撃沈!

 そもそも、排出ガスの窒素酸化物と粒子状物質の排出量が基準値以内に収まっていれば問題なく継続運行できるわけである。排出基準は・・・

総重量区分 基準値
1.7t以下
(ディーゼル乗用含む)
NoX→0.48g/km(昭和63年規制ガソリン車並)
PM→0.055g/km 
1.7t超〜2.5t以下 NoX→0.63g/km(平成6年規制ガソリン車並)
PM→0.06g/km
2.5t超〜3.5t以下 NoX→5.9g/kWh(平成7年規制ガソリン車並)
PM→0.175g/kWh
3.5t超 NoX→5.9g/kWh(平成11年規制ディーゼル車並)
PM→0.49g/kWh(平成11年規制ディーゼル車並)

こうなる。ガゾリン車の場合問題視されるのはNoXである。(なのに何故継続運行できないのか理解に苦しむ。私の住んでいる地域は、NoX対象地域外なのである。しかしNoX、PM対象地域内故にダメだとおっしゃる。)。エイトの場合、1.7t以下のガソリン貨物故、一番上の基準値が適用されるわけだ。エイトの場合、昭和54年規制に適合している(型式の識別区分がJ-で始まる。私のエイトだとJ-SJ20。初期型は50年規制、H-SJ20。)が、この度の規制では昭和56年規制、識別区分Lまで。つまり、それ以降の63年規制適合車は○である。また、注目に値するのは、×となった個体でも、型式によってはNoX排出量が特に少なく、基準に適合となるものがあるという点だ。実際に、F型ガソリンエンジンのランドクルーザーFJ62が、簡単な浄化装置の装着により継続運行に成功したという情報を耳にした。少しだけ光が見える・・・・・・・。
因みに、我がエイトの場合は、運行中の使用過程車であるが、上表の基準に満たない自動車は、特定地域での登録が全く出来ない。

 では、どうすれば良いのか。もうお馴染みの陸運支局へ参上し、これまた長々と相談する。
8mano
@「NoX、PMの対象地域について。こちらはガソリンエンジンなのだから問題はNoXだけのはず。NoX対象地域外という表記とNoX,PM法対策地域内という表記との相違は何なのか」
A「EGR(排ガス浄化装置)、チャコールキャニスターを装着(共にSJ40ジムニー1000用)した上で、キャタライザー(触媒)を装着する事によって、NoXをクリアできるのではないか?また、この場合、やはりガス検が必要となるのか、受ける場合は個人でも構わないのか」
担当官
「@については私達のところでは何とも言えませんね(長々と意味の解らない説明が続いた)。Aについてですが、それらの対策部品を装着する事によって適合を目指す場合は、ガス検は避けて通れませんね。それで、ガス検を受けてもらっても、合格となる可能性は五分五分です。方法としては間違っていないと思いますが、ガス検、これは大変ですよ。勿論、個人でも受ける事が出来ますが、費用などの事を考えると現実的ではないといえます。商業ベースで考えるのであれば別ですが・・・8manoさんがおっしゃる、規制適合車における排出基準の少ない車種についても、実際に測ってみないと難しいといったところです。」

なるほど。では、排ガス検査を何処で受ければよいのかというと、公的試験機関というところでやってくれる。
1.財団法人日本自動車輸送技術協会
検査場所  東京都昭島市(ディーゼル、ガソリン) 京都府京都市(ガソリンのみ)
2.財団法人日本車両検査協会
検査場所 東京都東久留米市(ディーゼル、ガソリン) 大阪府堺市 東京都北区(共にガソリンのみ)
3.財団法人日本自動車研究所
検査場所 茨城県つくば市(ガソリン、大型ディーゼル)

1〜3だと、大阪で受ける事になる。しかし!!検査費用を聞いて完全に萎えた。一回10まんえんオーバーなのである。しかも!合格、不合格に関わらず・・・・・。ガス検は本当の最終手段と言えよう。


手段3・・・・・残された正攻法 結果・・・勝利!

 さて・・・・。乗用への用途変更が不可、ガス検を受けるには相当な投資と技術力と根気、情熱が伴う故に切り札として温存せざるをえない。こうなってくると、最早私のような腰抜けには打つ手が無いに等しい。上記の手段を模索、検討するのにも、随分と時間を割いてしまい、そうこうしている間にリミットはどんどん近づいてくる。このままではエイトが只の置物になってしまう。焦る。焦った分、リミットの接近が早く感じる・・・・。
 当時の仕事柄、陸運支局へと足を運ぶ機会が多かったので、行くたびに検査官に相談。話は進まず、出て来る案はと言えば、ソコソコの金額を払って、それ専門の業者に任せるとか、地域外へ引っ越すとか・・。どちらも現実から遠すぎる。そんな内容の薄い話をしていた折に、私がポロリとこぼした言葉・・・。コレが私とエイトを一気に打開策への扉の前まで導いた。
8mano
「・・・・。前回(旧NoX法)のように、特例措置(註1)があれば解決策が無くもないんですけど・・・。」

註1:旧Nox法における特例措置
 ご存知、旧NoX法とは、平成5年に施行された排ガス規制である。従来から新車に対しての排気ガス規制は実施されていた(旧車、特にスポーツモデルでは規制前、後で大きく出力が違い、これにより人気が墜落したモデルもある)が、更なる環境保護の為、実際に運行している使用過程車(貨物登録車)を規制するというもの。当時の規制において我がエイトは規制対象地域外ということで強制廃車を免れたが、意外にも多数の個体が救済されたという事実がある。
 ひとつは、上記にもあるように、乗用への用途変更であった。これは貨物車のみを規制するという穴を突いた作戦(PM法では乗用ディーゼルも対象となるので、ガソリン貨物及び大都市部通行規制にのみ有効)。そしてもうひとつが、特例措置によるものである。
 特例措置とは、排ガス低減装置を取付け、公的試験所にて基準をクリアーした場合、同型枠として、10台分まで車検を通す為の「適合証明書」が発行され、規制適合となり継続運行が可能になるというもの。これにより数万台に及ぶ車両や業者、個人が廃棄や車庫飛ばし等の不法行為をすることなく、救済された。

担当官
「と、いいますと?」
8mano
「旧Noxの時に、同型車でクリアしたショップさんが存在するんですよ・・・。」
担当官
「・・・8manoさん!!もしかすると、その特例措置、有効かもしれません!!」
8mano
「・・・・!!!うそ?」

 担当官によると、あくまでガソリン車についてだが、旧法案の規制値をクリアしているという事は、今回の法案の規制値もクリアできている可能性があるとのこと。詳しくはそのショップに問い合わせてみて欲しいと・・・・・・。早速、エイトをガス検に合格させたプロショップ(註2)さんに連絡を取る事となった。

註2:エイトをガス検に合格させたプロショップ
←Click!その名もジム・オート湘南。ジムニスト(特に旧型)の間ではあまりにも有名な神奈川県のジムニープロショップ。旧型ジムニー用部品の開発やレストア等、確かな技術を提供してくれる数少ないショップといえる。因みに社長の寺川氏は完璧なレストアにより超美麗なエイトを製作した人としても有名。現在は別のエイトを製作中である。

 恐る恐るメールを送信。寺川社長とは電話で何度かお話をした事があるのだが、何をそんなに恐れているかというと・・・・その1:PM法に適合していないかもしれない。その2:もう10台分売れてしまっているかもしれない(註1参照)。夕方届いた返信メールには・・・「いけますよ!先日も一台通しました。8manoさんのSJ20の正式な型式を教えてください。(かなり略)」パソコンの前で雄叫びを上げたのは言うまでも無い・・・・・。ここで寺川社長が正式な型式を質問されたのは、前述の通り、型式区分により可否が決まる為である。エイトは大きく分けて前期と後期に分けられる。前期はEGR未装着の昭和50年規制適合のH-SJ20。後期はEGRを装着した昭和54年規制適合のJ-SJ20となり、ここが運命の分かれ道となるのだ。SJ20最終型の我がエイトはJ-SJ20。PM法適合可!である。懸念していた台数も、まだ10台には達していない(平成16年現在)。出口の扉が少しだけ開いた・・・・。
 さて、話が現実となってくると、金銭的な問題が浮上してくる。私の所得はかなり低い方なので、ポンと払うことが出来ない。それについて寺川社長に相談したところ、なんと・・・・・「資金ができるまで、取り置きしておきます」という有難いお言葉・・・・・。おまけに、通常はジム・オート湘南に全てをお任せして規制をクリアしてもらうところであるが、書類のみの販売。触媒の取り付け等の作業、陸運支局に持ち込んでの記載変更を私自身が行うと言う事で少しオマケ(値切ったのか??)して頂き、費用はガス検の受験料より安価いオネダンとなった。
 
 この流れにより、継続運行の目処が立ったと言える。はじめからこの手法をとっていれば話が早かったと思われるかもしれない。勿論、ジム・オート湘南が旧NoX法の時にエイトをクリアさせていた事は知っていたし、同店の雑誌広告にも掲載されていたのだから、知らなかった訳でもないのである。しかしながら、私は大きな勘違いをしていた。というのも、前述した車検証の記載に、「この自動車の使用の本拠はNoX規制地域外」とあり、「NoX,PM規制地域内」とある。つまるところに、旧NoXは関係なく、新規制であるNoX、PM法が適用されると解釈したのである(だからこの紛らわしい記載を改めろと言っているのに!)。色々と情報収集していても、旧法案の規制値や対象地域には触れられていない。更に、PM法について色々と頑張っている方々の多くがディーゼル車オーナーである為、ガソリン貨物車の情報が少なかった事もあり、旧法案に関しては忘却していたのである。まさにそれこそが盲点であり、灯台下暗しであった。実際に、PM法は意外と多くの国民に(某知事の派手なパフォーマンスにより)知られているが、私がエイトの規制について話をすると、ガソリン車も規制されている事は知らない方が多い。これは、(某都知事の派手なパフォーマンスにより)PM法=ディーゼル殺しというイメージが植えつけられている証ともいえる。つまり、規制の本来の目的、内容が半分も理解されていないと言う事だ。更に、今回の場合は担当官側も、まさかこんな(不人気な)クルマが、旧規制をクリアした例は無いだろうと思い込んでいたものだから、話題に上がらなくて当然。そして、早急にプロに相談する事無く自力で何とかしようとする私自身に驕りがあった事、物事に対する姿勢にも問題があったと言える。


2004年7月末

 ちょっとしたハプニングで積み立てを失う等のトラブルがあったものの、’04年7月末、遂に書類を注文すべくジム・オート湘南寺川社長に連絡を入れる。寺川社長の第一声は「お待ちしておりました。」・・・・・そう、本当に長期に渡り取り置きして頂いていたのだ。お待たせ致しました!!即注文。エイトの車検証の写しを送り、証明書発行を(財)日本自動車輸送技術協会に申請して頂く。一週間程後に、3枚綴りの自動車排出ガス試験結果証明書が私の手元に届いた。ほんの3枚の紙切れだが、内容を目の当たりにすると、コレを取得する為に注がれた情熱や苦労fが垣間見え、鳥肌が立つ思い・・・・。

2004年8月初旬
 

 書類が揃い、リミットである車検(9月11日満了)も迫ってきた。ここから先は私の手による作業となる。規制クリアにおいて、エイトに必要とされるものは、EGR(排気ガス浄化装置)とキャタライザー(三元触媒)である。三元触媒はスズキ純正が用意できた。EGRについては、前述の通り装着されているのだが、純正の三国SOLEXに代えてSJ40(ジムニー1000)用愛三製をマニホールドごと流用しているので、機能はキャンセルしている。つまり本当に装着されているだけ。よって、SJ40のEGR配管を解析し、正しく繋ぎなおさなくてはならない(検査場での排ガス検査で落ちたら話にならない)。これについてはSJ40のマニュアルを、北海道のガラス屋氏(註3)より入手しているので問題ない。それよりも仕事が忙しく、作業が進まない事こそが問題。

註3:北海道のガラス屋氏
SJ20前期型を駆る北海道のガラス屋氏。WEBページ「帰ってきた旧ジムニーの部屋」首謀。過去に私が粉砕したトランスファーを貸与して頂くなど、日頃からお世話になっているエイト仲間である。詳しくは氏のHPをご覧頂きたい。


2004年8月中旬
●Fデフの交換
 
 ごく最近リアデフに不具合が出てホーシングごと交換したのだが、今度はフロントが死亡。必要部品は滋賀のハイロンサム氏(註4)が持参してくれた。純正部品も到着済み。こちらはメンテコーナーに掲載。

註4:滋賀のハイロンサム氏
滋賀県在住のエイトフリーク、ハイロンサム氏。過去にエイトに愛乗していたカムバックエイター。エイトクラブ近畿(私と氏だけ)所属。多くのエイト部品が滋賀〜兵庫間を往復している(というより私が奪い続けている)。

2004年8月下旬
●EGR(註5)の配管

註5:EGRとは
排ガス対策の神器のひとつであるEGRとは、なんぞや?
 排気ガス中の有害成分はHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)の3種類。3成分のうちHC,COは未燃焼成分ともいわれ、完全燃焼を促進することにより、その排出量を低減することが可能であるが、NOxは高温の燃焼により空気中の窒素が酸化したもので、完全燃焼を促進するほどその排出量が増大するという相反する特性を有するものである。そこでこのNOx排出量を低減するために利用された技術が、混合気に排気ガスを還流するいわゆるEGR(Exhaust Gas Recirculation System)である。EGRとは、燃焼室に混合気、燃焼用空気とともに、不活性ガスであるCO を主成分とする排気ガスを混入することにより、燃焼温度を下げ、その結果NOx排出量の低減するというものらしい。最近のディーゼル車ではEGRクーラーを過給器のインタークーラー間に装着して吸気温度を下げ、NoXを低減させているモデルもある。興味のある機構だが、魅力的なオネダンで入手するのは難しいと思われる。因みにEGRクーラーは水冷である。



さて、EGR配管でSJ40にあってエイトに無いもの・・・。それはディストリビューターのバキュームとエアクリーナのバキュームアクチェータと同じくエアクリーナへと繋がるダッシュポットアクチェータ。これらは必要に応じて繋ぎ代えた。ミッション4速スイッチと接続されるバキュームスイッチングバルブは配線して生かしておいた(常時作動)。これでマトモにEGRが作動する(はず)だ・・・。

2004年9月初旬
●触媒の取り付け
 
 いよいよこの作業だ。入手した触媒(註6)はエスクード用。ジムニー用としては少々太すぎるのだが、私のエイトはSJ40のフロントパイプをベースに太いパイプを溶接して特製のものを製作してあるのでジムニー用では細すぎる。吟味した結果、エスクード(1996年式TA01)のものに落ち着いた。これをマフラークランプで繋げてしまえば一丁上がり!の予定だったのだが、触媒のパイプの肉厚が思いのほか厚く、元のパイプが刺さらない。こうなったら溶接だ!!!しかし・・・・もうパイプはバラバラに切ってしまったし、現物合わせで鉄工所に持ち込んだところで微妙な角度調節は難しい。自分でやるしかない!!
 早い話が、溶接機を購入した。アマチュアレストアラーや趣味人の間で使い物にならないと悪評高い100V家庭用小型アーク溶接機だ。オネダンは8000円。色々と聞くところによると、「パワー不足」「薄板の溶接に向かない」「アークが安定しない」・・・。マニアはTIGだMIGだバッテリー溶接だ・・と溶接機には大変詳しい。勿論、私にとってはどれも欲しいのだが、アーク機ってそんなにダメなのか?恐らく、やりようによってある程度何とかなるはずだ。否、何とかするしかない!ブツは溶接機を知るものの間では有名なイクラ(育良)製の使用率40%出力40A。果たして使えるのかゴミなのか・??
 結果・・・ちゃんと繋げました。美しいビードは形成されていないが、しっかりと溶接できた。この値段ならばガレージに一台あれば作業の幅が広がるはず。最初はビードをうまく引けず、点付けの連続で接いでいたのだが、なれてくると汚いがビードが引ける。う〜ん。以前からやりたいとは思っていたが、メチャオモロイ!!!余計なものまで溶接してしまいそうだ・・・(本音はガス溶接覚えたいのだが)!!勿論、アークはやや不安定であるが上手く連続させる事も可能だし、溶棒も1.6あたりまでなら、こまめに溶棒を切断してやればなんとかOK。

 
装着するとこのようになる。フロントパイプはフレームの真横を通過しており、触媒を仮止めすると干渉。フロントパイプの首を延長して下に逃がすかとも思ったが、クロスカントリーヴィークルの腹にモノをぶら下げる訳にはいきますまい。で、出力の低い脳味噌をフル回転させて考えた結果、斜め45度ツイストさせて溶接。これでギリギリフレームを回避。手前にヘタクソな継ぎ目が見える。装着して後ろ側をつけようとすると・・・合わない!!微妙に角度を間違えた(泣)・・・で、現在リアマフラー作成中・・・。

註6:三元触媒とは
 ここで何度も出てきている触媒について。自動車愛好家(特に趣味性の高い車輌)の多くは触媒なんぞ排気抵抗に過ぎないと思われている事と思う。いやいや、これがなかなか凄いヤツである。私にはコイツが抵抗だなんて恐れ多くて思えませぬ。触媒とは、有害な気体が無害な気体へと変化するのを促進する非常に重要なデバイスである。して三元触媒とは、NOx,HC及びCOの三種類の有害物質をN2O,H2O及びCO2に酸化還元する触媒のことである。主成分はRd,Rh及びPtなどの貴金属で、理論空燃比(燃料を理論的に完全燃焼できる最小の空気と燃料の重量比)付近で上記3種の有害成分を同時に除去するという、そりゃあもう大変エライ装置。で、その結果排出されるのがN2Oである。N2Oは毒性がなく吸入麻酔薬にも使われている安全な物質だが、地球温暖化物質のひとつであるとされている。 N2O 1分子は二酸化炭素(CO2) 310分子に相当する温暖化効果があるという。N2Oは化学的に安定なため対流圏内でほとんど消滅せず、成層圏のオゾンと反応して触媒的にオゾンを消滅させる為、排出削減対象ガスに指定されている。現在はN2O分解触媒の開発が全力で進められているらしく、近い将来の市販車にはこれも装着されることになると思われる。
 触媒レスの車輌を結構お見受けするが、微量な体感的パワーアップを目的にこれらを取り外す気に、貴方はなりますか?


2004年9月5日
●駄目ダメ車検対応(インチキ)マフラーの完成
 かなりマズいリアマフラー(とてもお見せできませぬ)が完成し、プロペラシャフト交換。ブレーキもエア抜きし、車検準備を整える。触媒を取り付けたにもかかわらず、パワーダウンは感じない。滅茶苦茶なマフラーなのに音は以前よりも静かで、エイトらしい良い音だ・・・。タイヤもノーマル下駄山に交換。色違いのホイールにより一層ボロく見える。


2004年9月7日
●車検証からアノ言葉が消えた日・・・
 車検前日。私は朝っぱらから姫路自動車検査登録事務所の前に居た。何をしに来たのか。検査を恐れて陸運支局にスーイサイドアタックを・・・ではなく、記載変更に手間取るはずだと睨み、車検前にこれを済ませておこうと思い参上したのである。
 まず、検査ライン横の詰所へ行き、検査官に書類と現車を見ていただく事にした。数値を照らし合わせ、規制値(NOx0.48g/km)よりも数値が下回っている(ガスレポートによると0.153g/kmまで低下)事実を確認していただくわけだ。ここで記載変更にあたって書類を作成してくれた(感謝!)。検査官の方々も、このテの変更に慣れておられないようで、私を含めた3人で「あーでもない、こーでもない」とグダグダ言いながら書類完成。「NOx、PM規制対応変更適合車」の記載が眩しい。

 さて次は車輌の確認か・・・存分に見てください!この適当に配管されたEGR!ヘタクソな溶接でツギハギだらけの触媒!錆びたボディ・・・変なオーナーを!っと思い痙攣しながら「現車確認」の一言を待つ・・・・が・・・・検査官A「ハイ。では庁舎で記載変更手続きを行ってください」・・・はい?・・・検査官B「別に現車は無くても結構ですよ」・・・マ ジ で す か ! ?・・・検査官AB「マ  ジ(笑)」
 おとなしく庁舎に向かい、記載変更手続きを行う。一号シートとOCRシートを購入し(35円也)、必要事項を記入。これを受付のお兄さんに手渡し、検査官の人々5人くらいでゴニョゴニョ言いながら数分・・・・「8manoさーん」きた!!「ハイッッッ!!!(訓練兵並みの良き返事だ)」「お疲れ様でした!適合です。」・・・・・・やった・・・・

 使用車種規制(NOx・PM)適合。・・・・適合!!!使用の本拠は・・・なんてもう気にならない!!あの忌々しい「この自動車は平成15年9月30日の車検満了を超えて登録、使用することはできません」という破滅的一文が検査証から完全に消えて無くなった・・・・完全に・・・だ・・・。これでまた走れる。私もエイトも・・・。実に呆気なく、時間にして数十分。しかし、ここまで来るのに本当に沢山の励ましや協力を頂いた。励まし、元気付けてくれた多くの方々、部品を無償で提供してくれたハイロンサム氏、資料提供ガラス屋氏、苦労して取得したガスレポートを我侭な内容で譲って頂いた寺川社長。相談に乗って頂いたり、書類作成を手伝って頂いた検査官の皆様・・・こんなところからで大変恐縮ではありますが、ありがとうございました!!これからもボロく貧しく美しく、我8道を猛進す!!


2004年9月8日
●継続検査
 NOxの不安が解消されたので継続検査へ。ラインをズンズン通過してゆく。ヘッドライトの光量が怪しかったので全開で光度120。通過。排ガス・・・毎年キャブをいじくりながら通過するところだが、今回は一発通過・・・・オカシイ・・・・。こんなにスンナリいくということは最後に罠が張ってあるに違いない。っと思った矢先、自作車検対応(インチキ)マフラーにケチがついた。もう少し車体後端まで排気管を延ばしてくださいとの事。アイヤー一本とられました〜!オマケに車体番号が見えにくいやら反射器の面積が小さいやら、イロイロと言われてしまった(汗)。今まで大阪で通してきたが、よく言う「大阪の車検はユルい」というのは本当だ。改善すべく帰宅し、解体屋で買った何かのマフラーを切って溶接。再度検査場に参上し、無事車検継続。これで全部終わったのだ!!これにて作戦終了!!

 ようやく一年間に及ぶ戦いが(なんとか)終焉を迎えたことになる。今回、イロイロと調べてみて強く感じたことだが、法規制とは無縁の人々(無縁とは言えないのだが無縁だと思い込んでいる)や、これらの規制に関して近い位置にいるはずの検査官共に、自動車排出ガス規制に関する認識が非常に曖昧である。これから先も自動車を使用してゆく以上、我々は真剣に考えなければならない。これから先、環境的問題により(それは環境汚染だけでなく資源的な事も含めて)化石燃料を燃焼させる内燃機関が消え行く時が来るかもしれない。不可抗力といえど、自動車文化が歴史から淘汰された時に、悪文化であってはならないのだ。次の規制は一体いつなのだろう・・・・。

-完-